日本のどこかにあるスーパーマーケットの店長、その名も猪熊店長。
なんだかすごく強そうな名前の店長とパートさんの日常の会話です。
「明日からは、ついに猪熊店長って人になるのかぁ。
店長、今までお世話になりました。お元気で」
「永遠の別れみたいに言わないで。応援とかで来ることもあるし!」
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次の日の朝、パートさんが、トイレ掃除の名前表をクルクルと回しました。
開店前の職場のトイレ掃除は、店舗スタッフ全員が1日ずつ交代で担当です。
今日の担当パートさんがトイレに行くと、中で何かが動きました。
「うわぁぁーーーーーー!!!」
思わず腰を抜かしそうになるパートさん。
「わっ!びっくりさせてしまってすみません!今日からこの店舗に異動になった猪熊ですっ……!
あ、怪しい者ではありません。どうぞよろしくお願いいたします。」
手にはパツンパツンのゴム手袋を付け、流せるトイレシートを持った猪熊店長が
深々と頭を下げました。
「あ、い、猪熊店長なんですね。パートの塩崎です。誰もいないと思っていたので、
びっくりしてしまってすみません!どうぞよろしくお願いしますっ!
あの、トイレ掃除、今日は私が当番で……」
「ちょうど今終わったところなんで大丈夫ですよ。
では、事務所に戻りますね。どこか出来ていないところがあったら、教えてもらえますか?」
「あ、はい……!ありがとうございます!」
そう言うと、猪熊店長は掃除道具入れの扉を閉め、手を洗い、アルコールで消毒をして、トイレから出て行きました。
塩崎さんがトイレを見渡すと、
そこにはピカピカの空間がありました。
「私が掃除するより、きれいじゃん……!
しかも、花まで飾ってある!!」
手洗い場に、小さな小瓶に可愛らしいは花が活けてあります。
「い、猪熊店長……、デキる!!」
その足で塩崎さんは、お店の雑貨コーナーに行きました。
そして、事務員の鈴木さんのデスクへ向かいました。
「鈴木さん、このゴム手袋、店舗使用品で処理してもらっていいですか?」
「了解~。でも、そんな大きいサイズのゴム手袋、誰が使うの?」
塩崎さんは、LLサイズのゴム手袋を袋から出し、
トイレ掃除道具入れの、MサイズとLサイズのゴム手袋の横に並べました。
「よしっ!」
さて、これから朝礼が始まるようです。