みなさん、こんにちは😃
「POPの学校」の山口茂です。

時を遡ること22年前。
2003年にキリンビール社から発売された「8月のキリン」。この商品のコンセプト、デザイン、手書きの商品名、さらには商品名に「8月」という言葉を使った大胆なアプローチは、僕が40年にわたりキリンビールを見続けてきた中で、他に例を見ませんでした。

そんな独創的な商品づくりの背景や世界観が、消費者にどのようなインパクトを与えたのかについて、今回は僕なりに考えてみました。

この商品を語るには「5つの視点」で掘り下げてみたいと思います。

1. 手書きデザインの温もり
商品名や缶のデザインが手書き風で描かれているため、親しみやすさと個性が際立っています。大量生産ではなく、特別で丁寧に作られた印象を与え、消費者に温かみや安心感を届ける効果があると感じます。

2. 「8月」という季節感の演出
「8月」という言葉は、暑さのピーク、夏休み、帰省、祭り、花火といった特別なイメージを想起させます。この商品は、そんな夏の情景やノスタルジーを感じさせる演出に成功していると考えます。

3. アート的な世界観
イラストやシンプルなライン、草原を思わせるデザインは、まるで絵本や詩のような雰囲気を醸し出します。日常から一歩離れた非日常感を演出し、この商品の体験そのものを特別な時間として印象づけているように思います。

4. メッセージ性のあるコピーとデザイン
他の広告ツールに描かれいた「BE THE VOICE」というメッセージは、消費者に自分らしさを大切にしようという前向きな印象を与えます。また、風や草原をイメージさせる絵柄は、自然への愛や自由な気持ちを象徴しており、感性に訴える商品に仕上がっています。

5. 限定感が生む特別感
「8月のキリン」というネーミング自体が限定的であり、「今しか楽しめない特別な体験」を連想させます。この限定感は、消費者の購買意欲を高める大きな要素として機能していたと思います。

残念ながら現在は販売されていませんが、「8月のキリン」は今も心に残る一本です。時代とともに商品は移り変わりますが、こうした心を揺さぶるネーミングやコンセプトは、いつまでも語り継がれていくものです。

正直なところ、AIの時代だからこそ、このデザインをそのまま復刻してほしいという願いがあります。とはいえ、妻夫木くんは今サッポロビールのCMに出ているので、新しいCMはアニメーションで演出するのもアリかもしれません(^^)

「8月のキリン」を思い出すとき、それは単なる飲み物ではなく、夏の日差しや祭りの音、花火のにおいまで蘇らせてくれる存在です。この商品のネーミングに込められたストーリーや情緒は、人の心を動かし、記憶に残る力を持っています。

あなたにとって「8月のキリン」のような忘れられない商品はありますか?

それでは、また明日のブログでお会いしましょう!

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執筆者
山口 茂(やまぐち・しげる)

株式会社山口茂デザイン事務所 代表取締役
「POPの学校」主宰
食品商業コトPOP大賞審査委員長/POP広告クリエイター技能審査試験中央委員/ 日本コトPOPマイスター協会会長/宣伝会議講師 「お客様のメリットを伝えるコトPOPの提唱者」であり、日本でただ1人のコトPOPの指導者。40年以上にわたりPOPの制作指導・コンサルタンティングに従事。これまでの研修で約31万人もの受講者を持ち、全国で売れるお店をプロデュースしている。毎月開講している「コトPOP勉強会」は日本全国から参加者が集まり、常に満員御礼。キャンセル待ちが出る勉強会となっている。著作に『コトPOPを書いたら あっ、売れちゃった!』『POP1年生』『コトPOPの効果検証』『POPの教科書』(いずれもすばる舎)、『1秒で心をつかむPOPのつくり方』(PIE)がある。